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地方公務員の中でも、広域行政を担い、地域の発展と住民の生活を根底から支える「都道府県庁職員」。安定した職業の代名詞として就職・転職市場で常に高い人気を誇りますが、「実際のところ、どれくらいの年収をもらっているのか?」という疑問を抱く方は少なくありません。
実は、同じ地方公務員・都道府県庁職員であっても、勤務する自治体によって平均年収には100万円以上の格差が存在します。本記事では、総務省の「地方公務員給与実態調査」などの公的データをもとに推計した47都道府県庁職員の平均年収ランキングを一挙公開します。さらに、なぜ自治体間でこれほどの年収差が生まれるのか、給与の仕組み、年齢別のモデルケース、そして今後の公務員給与の展望に至るまで、圧倒的なボリュームと緻密な分析で徹底解説します。
ランキングを見る前に、まずは地方公務員の給与がどのような構造で成り立っているのかを理解しておくことが重要です。公務員の給与は、法令や条例によって厳密に定められており、大まかに「給料(基本給)」「諸手当」「ボーナス(期末・勤勉手当)」の3つの要素で構成されています。
公務員の基本給は「給料表」と呼ばれるマトリクス表に基づいて決定されます。一般行政職の場合、「行政職給料表」が適用され、職務の級(役職や責任の重さ)と号給(経験年数や勤務成績)の交差する部分がその人の基本給となります。毎年定期昇給があり、基本的には勤続年数が長くなるほど給料が上がっていく年功序列の側面を色濃く残しています。
都道府県ごとに年収に大きな差が出る最大の理由が、この「地域手当」です。地域手当は、民間企業の賃金水準や物価が高い地域で勤務する職員に対して支給される手当です。
例えば、東京都の特別区内に勤務する場合、基本給や扶養手当の最大20%が地域手当として上乗せされます。一方で、物価水準が全国平均に近い、あるいは低いとみなされる地方の自治体では、地域手当の支給率が数%にとどまるか、あるいは全く支給されない(0%)ケースもあります。基本給が同じでも、この地域手当の有無によって月に数万円、年間に換算すると数十万円の差が生まれるのです。
地域手当以外にも、公務員には充実した手当が用意されています。
民間企業のボーナスにあたるのが「期末手当」と「勤勉手当」です。夏(6月)と冬(12月)の年2回支給されます。
支給月数は人事院勧告(国家公務員の給与水準を民間企業に合わせるための勧告)に準じて各自治体が決定しており、近年は年間で基本給の4.3〜4.5ヶ月分程度が支給される傾向にあります。
それでは、47都道府県庁職員(一般行政職)の推計平均年収ランキングを一挙に紹介します。
※本ランキングの数値は、総務省の給与実態調査等の公表データを基に「平均給料月額+各種手当+期末・勤勉手当」を合算して推計した目安であり、実際の支給額や個人の年収を保証するものではありません。また、平均年齢の違いも年収に影響を与えている点にご留意ください。
| 順位 | 都道府県名 | エリア | 推計平均年収 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 関東 | 約754万円 |
| 2位 | 大阪府 | 近畿 | 約713万円 |
| 3位 | 神奈川県 | 関東 | 約708万円 |
| 4位 | 愛知県 | 中部 | 約706万円 |
| 5位 | 静岡県 | 中部 | 約702万円 |
| 6位 | 兵庫県 | 近畿 | 約699万円 |
| 7位 | 千葉県 | 関東 | 約690万円 |
| 8位 | 新潟県 | 中部 | 約689万円 |
| 9位 | 岩手県 | 東北 | 約687万円 |
| 10位 | 宮城県 | 東北 | 約686万円 |
| 11位 | 埼玉県 | 関東 | 約685万円 |
| 12位 | 滋賀県 | 近畿 | 約685万円 |
| 13位 | 福島県 | 東北 | 約680万円 |
| 14位 | 徳島県 | 四国 | 約680万円 |
| 15位 | 北海道 | 北海道 | 約679万円 |
| 16位 | 京都府 | 近畿 | 約679万円 |
| 17位 | 三重県 | 近畿 | 約678万円 |
| 18位 | 岡山県 | 中国 | 約675万円 |
| 19位 | 山形県 | 東北 | 約675万円 |
| 20位 | 茨城県 | 関東 | 約674万円 |
| 21位 | 広島県 | 中国 | 約674万円 |
| 22位 | 香川県 | 四国 | 約673万円 |
| 23位 | 山梨県 | 中部 | 約670万円 |
| 24位 | 福岡県 | 九州 | 約668万円 |
| 25位 | 愛媛県 | 四国 | 約665万円 |
| 26位 | 群馬県 | 関東 | 約665万円 |
| 27位 | 石川県 | 中部 | 約664万円 |
| 28位 | 和歌山県 | 近畿 | 約664万円 |
| 29位 | 沖縄県 | 沖縄 | 約663万円 |
| 30位 | 栃木県 | 関東 | 約662万円 |
| 31位 | 鹿児島県 | 九州 | 約662万円 |
| 32位 | 岐阜県 | 中部 | 約660万円 |
| 33位 | 熊本県 | 九州 | 約658万円 |
| 34位 | 福井県 | 中部 | 約657万円 |
| 35位 | 秋田県 | 東北 | 約656万円 |
| 36位 | 青森県 | 東北 | 約656万円 |
| 37位 | 大分県 | 九州 | 約655万円 |
| 38位 | 富山県 | 中部 | 約655万円 |
| 39位 | 長崎県 | 九州 | 約654万円 |
| 40位 | 長野県 | 中部 | 約649万円 |
| 41位 | 島根県 | 中国 | 約648万円 |
| 42位 | 山口県 | 中国 | 約644万円 |
| 43位 | 奈良県 | 近畿 | 約642万円 |
| 44位 | 宮崎県 | 九州 | 約641万円 |
| 45位 | 鳥取県 | 中国 | 約641万円 |
| 46位 | 佐賀県 | 九州 | 約638万円 |
| 47位 | 高知県 | 四国 | 約636万円 |
1位の東京都と47位の高知県を比較すると、年間で約118万円もの格差が生じていることがわかります。この格差の背景には何があるのか、次章以降でエリア別・自治体別に詳しく分析していきます。
上位にランクインした都道府県は、いずれも日本経済を牽引する大都市圏や、強力な産業基盤を持つ地域です。ここではトップ5の自治体について、なぜ年収が高いのかを紐解きます。
日本の首都であり、最大の経済規模を誇る東京都が堂々の1位です。東京都庁の職員は、いわゆる「都庁職員」として特別なステータスを持っています。年収が高い最大の理由は、全国で最も高い地域手当(最大20%)が支給されるためです。また、特別区(東京23区)と市町村という複雑な行政構造の中で、広域行政としての高度な専門性と業務量が求められており、それに伴う各種手当や時間外勤務手当も平均水準を押し上げる要因となっています。
西日本の中心地である大阪府が2位にランクインしています。かつて大阪府は深刻な財政難から給与カットを断行していた時期がありましたが、財政再建が進んだことで給与水準は回復傾向にあります。大阪市や堺市といった巨大な政令指定都市を抱え、都市部の高い物価水準を反映した地域手当が支給されていることが高年収の背景にあります。また、2025年の大阪・関西万博に向けたインフラ整備やプロジェクト業務なども活発化しています。
横浜市、川崎市、相模原市という3つの政令指定都市を持つ神奈川県。東京都に隣接する首都圏の要所として、民間企業の賃金水準も非常に高く、県職員の地域手当も高い水準に設定されています。住宅費などの生活コストが高いエリアであるため、それらを補填する意味合いでの給与設定となっています。
トヨタ自動車をはじめとする世界的なモノづくり産業の集積地である愛知県。県内総生産も東京都に次ぐ規模であり、豊かな税収基盤を持っています。民間企業の給与水準(特に製造業の大企業)が非常に高いため、人事院勧告の基礎となる民間給与実態調査においても高い数値が出やすく、結果として県職員の給与水準も全国トップクラスを維持しています。
大都市圏以外で唯一トップ5に食い込んでいるのが静岡県です。静岡県は製造業(自動車、楽器、光技術など)が盛んであり、県全体の経済力が強いという特徴があります。また、過去のデータを見ても静岡県は常に上位の常連であり、安定した財政基盤を背景に、職員の待遇を手厚く維持していることが伺えます。
全国を6つのブロックに分け、それぞれの地域における給与の傾向や、その背景にある社会的・経済的要因を分析します。
特徴: 広大な面積を管轄するため、出先機関が多く、単身赴任や転勤が多いエリアです。
分析: 寒冷地帯であるため、「寒冷地手当」が支給されるのが大きな特徴です。これは冬場の暖房費などを補助する目的で、11月から3月にかけて支給されます。岩手県や宮城県が上位に位置していますが、これは東日本大震災の復興事業に関連する時間外勤務手当や、復興業務を担う職員の年齢層(中堅・ベテラン層が多い)が平均を押し上げている要因も考えられます。一方で、青森県や秋田県などは地域手当の支給割合が低く、全国的に見ると下位に位置しています。
特徴: 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県など、首都圏を構成する県が軒並み上位を占める「高年収エリア」です。
分析: 圧倒的な人口と企業数を抱え、物価・地価が全国で最も高い地域です。そのため、高い地域手当が設定されており、基本給に大きな上乗せがあります。北関東(群馬県、栃木県、茨城県)に行くと首都圏中心部よりは水準が下がりますが、それでも全国平均から見れば中位〜上位に位置する安定感があります。
特徴: 愛知県や静岡県といった工業県がトップクラスの年収を誇る一方で、長野県や福井県など地域によってバラつきが大きいエリアです。
分析: 東海地方(愛知・静岡・三重)は、自動車産業をはじめとする製造業の好調により民間賃金が高く、公務員給与もそれに連動して高水準です。北陸・甲信越地方は、降雪地帯では寒冷地手当が支給されるケースもありますが、都市部に比べると地域手当が低く抑えられるため、年収は640万〜680万円のレンジに収まる県が多くなっています。新潟県が8位と健闘しているのは、比較的高い年齢構成や手当の体系が影響していると推測されます。
特徴: 大阪府、兵庫県、京都府を中心に、西日本の経済を支える中核エリアです。
分析: 阪神経済圏を抱える大阪・兵庫・京都は物価水準も高く、高い地域手当が設定されているため全国でも上位に入ります。一方で、奈良県や和歌山県といったエリアは、大阪のベッドタウン的要素や一次産業の割合も高く、民間賃金水準の差から地域手当が低く設定され、同じ近畿圏内でも明確な給与格差が生じています。
特徴: 広島県や岡山県といった工業・商業の拠点県がリードし、四国地方は全体的に控えめな水準となっています。
分析: 中国地方では、マツダをはじめとする重工業が盛んな広島県や、水島臨海工業地帯を持つ岡山県が比較的高い水準を維持しています。対照的に、四国地方(徳島、香川、愛媛、高知)や山陰地方(鳥取、島根)は、大都市圏に比べて民間企業の賃金水準や物価が落ち着いているため、地域手当がゼロ、あるいは数%にとどまる自治体が多く、ランキングでは下位に集中する傾向があります。ただし、生活コスト(家賃や物価)も相対的に安いため、可処分所得(実際に使えるお金)で見れば、都会と遜色ない豊かな生活を送れるという側面もあります。
特徴: 福岡県が中心となり、その他の県は全国水準と比較すると下位に位置する傾向があります。
分析: 九州最大の経済都市である福岡市を抱える福岡県は、エリア内でトップの給与水準です。しかし、宮崎県、佐賀県、大分県などは、農業や観光業が中心であり、製造業などの大企業が少ないことから民間賃金水準が控えめです。結果として人事院勧告に基づく地域手当の恩恵を受けにくく、平均年収は630万〜650万円台に留まっています。沖縄県は特殊な地理的要因や離島対応などの各種手当があるものの、基本給ベースでは全国平均を下回る傾向にあります。
平均年収はあくまで「全職員の平均」であり、実際の給与は年齢や役職によって大きく変動します。ここでは、一般的な都道府県庁職員がどのようなキャリアを描き、年収を上げていくのか、年代別のモデルケースを紹介します。
役職: 主事、技師など
解説: 大卒で入庁した場合、初任給は20万円前後からスタートします。20代のうちは基本給が低く、ボーナスを入れても年収は民間企業の大手と比べると見劣りするかもしれません。しかし、毎年の定期昇給が確実に行われるため、焦る必要はありません。この時期は、現場の最前線で窓口業務や基礎的な行政実務を学び、公務員としての土台を作る期間です。実家暮らしや職員寮・借り上げ住宅制度を活用して生活基盤を固める若手が多いです。
役職: 主任、主査、副係長など
解説: 30代に入ると定期昇給の積み重ねによって基本給が底上げされ、生活にゆとりが出てきます。結婚や出産、マイホームの購入といったライフイベントを迎える職員も多く、扶養手当(配偶者や子供)や住居手当の支給が始まることで、年収が一気に跳ね上がる時期でもあります。仕事面では、プロジェクトの主担当を任されたり、若手を指導する立場になったりと、責任ある業務が増えてきます。部署によっては時間外勤務が増加し、残業代が年収を大きく押し上げるケースもあります。
役職: 係長、課長補佐、副課長、担当課長など
解説: 40代は、組織の中核として実務を取り仕切る重要なポジションに就きます。早い人であれば40代後半で「課長」に昇任し、管理職(マネジメント層)の仲間入りを果たします。管理職になると「管理職手当」が支給される代わりに、時間外勤務手当(残業代)の対象から外れる自治体が一般的です。しかし、基本給とボーナスの算定基準が大幅に上がるため、年収は安定して700万円から800万円台に到達します。この時期になると、同世代の民間企業(中小企業)の平均年収を大きく上回るようになります。
役職: 課長、次長、部長、局長など
解説: キャリアの集大成となる50代。多くの中堅・ベテラン職員は課長職以上として県政の根幹に関わる意思決定を行います。特に「部長」や「局長」といったトップマネジメント層に昇り詰めた一部のエリート職員は、年収が1,000万円の大台を突破します。広大な県土と数千億〜数兆円の予算規模を動かす都道府県の幹部は、大企業の役員に匹敵する責任と権限を持ち、それにふさわしい処遇を受けます。
都道府県庁職員の給与は、決して固定されたものではありません。社会情勢や国の政策によって常に変化しています。これから公務員を目指す方や、現役職員が知っておくべき最新の動向を3つのポイントで解説します。
現在、日本の労働市場における最大のトピックの1つが「定年の段階的引き上げ」です。地方公務員も例外ではなく、2023年度から2年に1歳ずつ定年が引き上げられ、最終的には65歳定年となります。
これに伴い導入されたのが「役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)」です。これは、原則として60歳に達した管理職を、ヒラ社員や非管理職のポストに降任させる制度です。さらに、60歳を超える職員の給与は、当分の間、60歳前の給与の「7割水準」に設定されます。これにより、「60歳以降も安定して働ける」というメリットがある一方で、生涯年収のカーブの描き方や、モチベーションの維持が組織としての新たな課題となっています。
公務員の給与改定の指標となる「人事院勧告」。近年、国内の物価高騰や深刻な人手不足を背景に、民間企業では歴史的なベースアップ(賃上げ)が行われています。人事院勧告は民間給与の実態に追随する性質があるため、地方公務員の給料表(月給)やボーナス支給月数も、ここ数年は引き上げ(プラス改定)のトレンドが続いています。特に若年層の初任給の引き上げ幅が大きく、優秀な人材を民間企業に奪われないための待遇改善が急務とされています。
かつての都道府県庁は「不夜城」と呼ばれるほど、議会対応や深夜に及ぶ予算編成作業が常態化していました。しかし、現在では厳格な労働時間管理が求められ、パソコンのログオン・ログオフ時間による客観的な勤務時間把握が導入されています。
これにより、「サービス残業」が撲滅され、働いた分の時間外勤務手当が100%支払われるようになった自治体が増えました。その反面、組織全体として残業時間の削減(ワークライフバランスの推進)が徹底されているため、かつてのように「残業代で稼ぐ」という働き方は難しくなっています。今後は、限られた時間内でいかに効率よく成果を出すかが評価の対象となり、それが勤勉手当(ボーナス)の査定に反映される実力主義的な側面が強まっていくでしょう。
ランキングの下位に位置する自治体を見ると、「給料が安いから働く魅力がないのでは?」と誤解されがちですが、それは早計です。
東京都庁の職員は年収が高いですが、東京は家賃が極めて高く、満員電車での長時間の通勤によるストレス、物価の高さなど、見えない「コスト」が多分にかかっています。
一方、ランキング下位の地方県であっても、家賃や土地の価格は都心の数分の一です。通勤時間が短く、自然豊かな環境でマイホームを持ち、子育てをしやすいという「QOL(Quality of Life:生活の質)」の観点で見れば、地方の公務員の方が精神的にも経済的にも豊かな暮らしを実現しているケースは珍しくありません。
都道府県庁職員の最大の魅力は、自らが生まれ育った、あるいは愛着のある地域の未来をデザインし、県民の生命と財産を守るというスケールの大きな仕事に携われることです。防災、産業振興、観光誘致、福祉政策など、その業務内容は多岐にわたり、民間企業では決して味わえない「公益性」と「ダイナミズム」があります。
年収ランキングは、あくまで一つのデータに過ぎません。これから都道府県庁職員を目指す方は、給与水準だけでなく、その自治体が直面している課題、求められる政策、そしてご自身が「どこで、どのようなライフスタイルを築きたいのか」を総合的に考慮して、進路を選択することが最も重要です。
47都道府県庁職員の平均年収ランキングから、地域手当をはじめとする複雑な給与体系や、各エリアが抱える経済状況の違いが見えてきました。1位の東京都(約754万円)から47位の高知県(約636万円)まで、その差は決して小さいものではありません。
しかし、地方公務員という職業の本質は、目先の年収額だけでは測れません。不況に左右されない絶対的な雇用の安定性、手厚い福利厚生、退職金制度、そして何より「公共の利益のために働く」という高い誇りは、全47都道府県の職員に共通して与えられる特権です。
これから迎える人口減少社会において、地方自治体の役割はますます重要になります。各都道府県庁は、給与面だけでなく、多様な働き方やキャリアパスを用意して優秀な人材を求めています。本記事のデータが、日本の地域行政を支える公務員という仕事への理解を深め、皆様のキャリア選択の一助となれば幸いです。

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